嘘日記 16日目 午後
しばらくしたら猫の鳴き声が聞こえた。
体を起こしてみると、メメヨと5匹位の猫が海を見ていた。その向こうからは、漁船がこっちに向かって来ていた。
漁船にはおっちゃんが二人乗っていて、荷物、魚を下ろしながら、小魚を猫にあげていた。
でけえ猫だなと言って、メメヨにイカをくれた。ビニールに氷を入れてくれた。
メメヨがおじさんにありがとにゃんと言った。
そして、車に乗る時にミャオと言った。
また車を走らせた。
メメヨがインドの話をした。半分は乗り継ぎの韓国でのご飯の話だったのだが。
話を聞いて、当たり前ではあるのだがメメヨはどこにいてもメメヨなんだなと思った。強く主張するでもなく。
何だか関心した。
彼女が話をしている間、話の中にいるよな気分になった。
それで話が終わった時には、丘の上の方にいた。
よくわからない場所に来てしまったけど、帰れない心配は無かった。
感動も無かった。
何だか、こんなもんだよなという気分になった。
車を降りて、コーヒーを飲んだ。
メメヨが手を握って来た。
子供の頃幼馴染と手をにぎったような、母親と手を握ったような、しっとりした手の柔らかみを感じた。
太陽が西に傾いていて、海が輝いていた。
メメヨがぎゅっと手を握った。その時、海で大きめの1m位だろうか、大きい魚がはねた。
ぼちゃーんって音が少し遅れて聞こえた。
またぎゅっとしたら、ぼちゃーん。
5分位の間に5回位やった。
これをインドで習得したのかしら。
そうして、しばらくやらなくなったと思ったら、ギュッギュッと握った。
そしたら、やはりぼちゃんぼちゃーん。
1分位う~んと唸ってから、ハッと大きい声を出した。
そうしたら、0.5秒位海と空が逆さになったように見えた。
もしかしてこれは、手を握った相手にだけ見せる幻覚術か?
こ、こいつ。
僕も気持ちを込めてギュッとメメヨの手を握った。
そうしたら、彼女はアンッて言った。
しばらくそこでぼーっとしていた。
その間、僕の中には、メメヨは前世ではユメコという名前で、近所の幼馴染でずっと仲の良いまま大人になって僕と結婚したという事が重い出されるように頭に浮かんでいたけど、多分違うだろう。
さっきの幻想術の続きであろう。
日が傾いて来たので、そろそろ帰るかとした。
そうして車で走っていた。
彼女が風が気持ちいいねと言うので振り向いたら、眠っているようだった。
ひょんひょんの家についたら、彼が家の前で缶ビールを飲んでいた。
夕焼けを見に行こうと彼と三人で帰りがてら歩いた。
こんなとこにあるんだって場所、住宅がひしめいてる所に急にある公園に連れて行ってくれた。
そこに大した高さではない展望台があった。
これの上から見えるんかと思ったのだが、登ってみてびつくり。
その公園の向こうに住宅が数件だけで後は畑、田んぼが広がっていて、西の方がよく見えた。
その時気付いたのが、ヒョンヒョンが案外酔っぱらっているという事だった。
エコバックに入れた一升瓶を出した。
その時にほらよって言おうとして間違えたと思うんだけど、あらよとほらよの間みたいな言葉を口にした。
コップを忘れたんだと思うけど、迷いの無い感じでラッパ飲みして見せたヒョンヒョンに敬意を示して僕達も、迷いなくラッパ飲みで酒を回した。
夕日も沈み、夕空の光も微かになった頃僕達は結構酔っぱらっていた。
ヒョンヒョンは途中からずっとクスクス笑っていた。
公演を出たら、ヒョンヒョンの嫁と娘とヤギが散歩ついでに迎えに来た。
ああ、ここは彼のベストプレイスなんだな。
それで僕とメメヨは歩いたのだが、ふらつきたい気分になったのでスーパーへ行って缶チューハイを何本か買って、駅前をうろついた。
マクドナルドでナゲットを食べながらコソコソ缶チューハイを飲んだ。
二人共大分酔っぱらっていて、ふざける事ばかり考えていた。
途中途中メメヨはン~ホッと言って、0.3秒位天地が逆になったビジョンを僕に見せてくれた。
そうして、また公園の展望台に行った。
そうしたらヒョンヒョンがいて、やっと来たかと言った。
それを見て僕達は、じゃあなと言って引き返した。その方が面白い気がして。
背中に、ちゃんと帰れよと聞こえた。
家に帰ってちゃぶ台で酒を飲んだ。
二人で笑かしあいをずっとやっていた。
最後の方は、コチョコチョくらいしかなくなってきて、ほんとにやめてとか言って、そんな繰り返しでそのまま崩れるように寝た。

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